住まいづくりを考える際、デザインや間取り、設備など、こだわりたい部分はご家族によってさまざまです。
その中でも、毎日の暮らしやすさに大きく関わるのが、室内の温度環境です。
冬の寒さや夏の暑さは、不快に感じるだけでなく、体への負担につながる場合もあります。
特に冬場は、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室へ移動した際の温度差によって、ヒートショックのリスクが高まることがあります。
今回は、住まいの寒暖差を抑える考え方と、全館空調についてご紹介します。
快適な住空間「温度」
毎日の生活において「快適」に繋がる1番の要因は、誰もが直接感じる「温度」かと思います。
夏は暑く、冬は寒くと、日本には春夏秋冬の四季があり1年を通して温度差が大きい国です。
夏の夜、帰宅したときに家の中の湿度が高くムワっとしていたり、2階がまるで蒸し風呂のような暑さだった経験はありませんか?
ジメジメとまとわりつくような暑さは不快に感じますよね。
冬の朝、寒くて暖かい布団からなかなか出られないこともあるかと思います。
寒いと身体がなかなか思うように動かせなくなります。
この夏の暑さ、冬の寒さは不快というだけでなく、命を脅かす危険にもなります。
時には命を落としてしまう「熱中症」や「ヒートショック」を引き起こす可能性が高いのです。
ヒートショックとは・・・
ヒートショックとは、急激な温度変化によって血圧が大きく変動し、身体に負担がかかることをいいます。
暖かいリビングから寒い脱衣所へ移動し、さらに浴室で衣服を脱ぐと、身体は急な寒さを感じます。
その後、熱いお湯につかることで血圧が変動し、めまいや立ちくらみ、意識障害につながる場合があります。
特に冬場の入浴時は注意が必要です。
消費者庁では、冬場に入浴中の事故が増える原因として、暖かい室内と寒い脱衣所や浴室との寒暖差などによる急激な血圧の変動を挙げています。
また、2023年の「不慮の溺死及び溺水」事故では、65歳以上の高齢者のうち、家や居住施設の浴槽で亡くなった方が6,073人とされています。
交通事故による死亡者数を上回る規模であり、住まいの温度差を小さくすることは、快適性だけでなく安全面から見ても大切な考え方です。
快適な家づくり
熱中症やヒートショックは、誰にでも起こり得る身近なリスクです。
住まいづくりで大切なのは、家の中の温度差をできるだけ小さくし、年間を通して過ごしやすい室内環境を整えることです。
そのためには、まず断熱性能を高めることが重要です。
※詳しくはこちら
家の性能~断熱性能~
断熱性能を高めることで、外の暑さや寒さの影響を受けにくくなり、冷暖房効率も高まりやすくなります。
あわせて考えたいのが、空調による温度管理です。
各部屋にエアコンを設置する方法もありますが、部屋数や使い方によっては、設置費用や電気代、管理のしやすさが気になる場合もあります。
そこで選択肢のひとつとなるのが、家全体の温度をまとめて管理する全館空調です。
全館空調は、部屋ごとの寒暖差を抑え、住まい全体を快適な温度に保ちやすくするための設備です。
全館空調とは?
全館空調とは、家全体の空調をまとめて管理するシステムのことです。
各部屋に個別のエアコンを設置するのではなく、床下や小屋裏などに空調設備を設け、空気の通り道を通じて住まい全体の冷暖房や換気を行います。
建物全体の温度差を抑えやすくなるため、リビングだけでなく、廊下、脱衣所、トイレなども快適に保ちやすい点が特徴です。
一方で、建物の断熱性や気密性、間取り、設備計画によって効果の感じ方は変わります。
全館空調を検討する際は、メリットだけでなく、費用やメンテナンス、暮らし方との相性も確認しておくことが大切です。
全館空調の主なデメリット
まずはデメリットから解説していきます。
デメリットを事前に把握した上で計画することが大切です。
1.各居室一定温度
全館空調は、家全体の温度をまとめて管理しやすい一方で、部屋ごとに細かく温度を変えにくい場合があります。
ご家族によって快適に感じる温度が異なる場合もあるため、極端な温度設定ではなく、住まい全体で過ごしやすい温度を考えることが大切です。
2.空気の乾燥
室内の乾燥は、エアコンの風等で室内の水分が減ってしまうことが主な要因です。
空気が含むことのできる水分の量というのは、空気の温度によって異なりますが、基本的に温度が高いほど多くの水分を含むことができます。
しかし、空気を直接暖めるエアコンは水蒸気が発生せずに温度だけ上昇するため、湿度は低下してしまい、部屋が乾燥してしまいます。
室内が乾燥すると、肌やのどの乾燥が気になる場合があります。
加湿器を使う、室内の湿度を確認するなど、暮らし方に合わせた対策を考えておくと安心です。
3.全館空調の稼働音
全館空調は、設備本体や空気を送る際の稼働音が気になる場合があります。
音の感じ方には個人差があり、日中は気にならなくても、夜間や静かな時間帯には感じ方が変わることもあります。
そのため、寝室や書斎など、静かに過ごしたい部屋との位置関係を考えながら、設備の設置場所を計画することが大切です。
また、全館空調は定期的な点検やメンテナンスも必要になります。
設置場所を考える際は、音への配慮だけでなく、点検やお手入れのしやすさもあわせて確認しておくと安心です。
4.光や音がもれやすい
全館空調では、空気を循環させるために、室内ドアの下にすき間を設ける場合があります。
空気の流れを確保しやすくなる一方で、部屋の光や音、においが伝わりやすくなることもあります。
個室でのプライベート時間を重視したい場合や、シアタールームなどを計画する場合は、建築会社と相談しながら、空調計画やドアの仕様を検討するとよいでしょう。
5.コストがかかる
全館空調は、一般的な個別エアコンに比べて、初期費用が高くなる場合があります。
また、基本的に長時間運転することが多いため、光熱費やメンテナンス費用も含めて検討しておくことが大切です。
ただし、建物の断熱性・気密性や設備の性能、使い方によってランニングコストは変わります。
導入を検討する際は、初期費用だけでなく、暮らし始めてからの費用も確認しておくと安心です。
全館空調の主なメリット
1.各居室一定温度
先程デメリットにもあった部分ですが、これはメリットとデメリットと表裏一体なのです。
しかし、この「家の中の温度を均一にしてくれる」ことは全館空調の最大のメリットとなります。
トイレや浴室、脱衣所などの寒暖差を感じやすい場所でも、安定した「快適な温度」を保ちます。
家の中の温度差を抑えやすくなるため、冬場の急な温度変化による身体への負担を減らし、ヒートショックのリスクを抑えることにつながります。
ヒートショックの影響による死亡者数というのは明らかにはなっておりませんが、入浴中の死亡者数は年間19,000人にものぼると推計されています。
これら全てがヒートショックであるというわけではありませんが、直接の要因でなくともほとんどがヒートショックが関係していると言われています。
そして、交通事故による死亡者数は2024年で2,663人だそうです。(参考:警察庁ホームページ)
ヒートショックによる死亡事故は日頃あまり耳にすることは少ないかと思いますが、実は交通事故の約7倍にもなるのです。
命はかけがえのないものです。その死のリスクを軽減できることは大変大きなメリットだと思います。
また、小児喘息や寒暖差アレルギーも、急激な温度差による自律神経の乱れが原因とされていますので、温度を一定に保つということは年配の方だけでなく、小さなお子様や家族みんなにとってもメリットとなるでしょう。
寒暖差の解消にはこれほどまでに恩恵があるのです。
2.熱中症リスク軽減
全館空調は、夏場の室内温度を一定に保ちやすい点もメリットです。
室内でも熱中症のリスクはあります。
特にご年配の方は、暑さやのどの渇きを感じにくい場合があるため、住まい全体の温度管理が大切です。
家の中の温度を把握しやすく、快適な状態を保ちやすいことは、夏の暮らしの安心にもつながります。
3.ペットも快適
ペットと暮らすご家庭にとっても、室内の温度管理は大切です。
外出時にエアコンをつけたままにする方も多くいらっしゃいますが、全館空調で住まい全体の温度を整えやすくなることで、ペットも過ごしやすい環境をつくりやすくなります。
4.室内の壁がすっきり
全館空調を採用すると、各部屋にエアコンを設置しない計画にできる場合があります。
室内機や配管、室外機の配置を抑えやすくなるため、壁まわりをすっきり見せやすい点もメリットです。
窓やカーテンとの干渉を避けやすく、インテリアを考えやすくなる場合もあります。
黒澤工務店で採用している全館空調設備
黒澤工務店では、住まい全体の温度環境を整える選択肢のひとつとして、「GADELIUSのG-Air」をご提案しています。
G-Airは、住まい全体の温度を整えやすく、気流を感じにくい心地よさや、メンテナンスのしやすさにも配慮されたシステムです。
家の中の温度差を抑え、快適な室内環境をつくりやすい点が特徴です。
ただし、全館空調は建物の断熱性・気密性や間取り、暮らし方との相性も大切です。
導入を検討される際は、費用やメンテナンスも含めて確認しておくと安心です。
まとめ
住まいの快適性を考えるうえで、室内の温度環境はとても大切です。
冬場の急な温度差は、身体に負担をかける場合があり、ヒートショック対策としても住まい全体の寒暖差を抑えることが重要になります。
全館空調は、家全体の温度を管理しやすく、リビングだけでなく、廊下や脱衣所、トイレなども快適に保ちやすい設備です。
一方で、初期費用や光熱費、メンテナンス、部屋ごとの温度調整のしやすさなど、事前に確認しておきたい点もあります。
ご家族の暮らし方や住まいの性能に合わせて、全館空調が合うかどうかを建築会社と相談しながら検討していきましょう。
この記事が、ヒートショック対策や全館空調を考える際の参考になりましたら幸いです。
最後までご覧いただきましてありがとうございます。
株式会社黒澤工務店
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